図形と計量第 5 回

三角比を含む不等式

はじめに

前回は三角比の方程式を解きましたが,今回は不等式に挑戦します。 単位円の定義を使いこなせるかどうかが試されます。

目次

三角比を含む不等式

前回,三角比を含む方程式を解けるようになりました。 不等式は,方程式が解けるなら難しくありません。 例として,次の不等式を解いてみましょう。 \(0^{\circ} \leqq \theta \leqq 180^{\circ}\)とします。

\( \begin{align} 2\cos^2\theta - 3\sin\theta < 0 \end{align} \)

まずやるべきことは,方程式の場合と同じで,使う三角比の種類を1つだけにすることです。 三角比の相互関係である\(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\)を使えば,\(\sin\theta\)に統一できそうですね。

\( \begin{align} 2\cos^2\theta - 3\sin\theta &< 0 \\[5pt] 2(1 - \sin^2\theta) - 3\sin\theta &< 0 \\[5pt] 2 - 2\sin^2\theta - 3\sin\theta &< 0 \\[5pt] 2\sin^2\theta + 3\sin\theta - 2 &> 0 \\[5pt] (\sin\theta + 2)(2\sin\theta - 1) &> 0 \end{align} \)

ここで,\(0^{\circ} \leqq \theta \leqq 180^{\circ}\)のとき\(0 \leqq \sin\theta \leqq 1\)であることに注意すると,この不等式が成り立つのは次の場合です。

\( \begin{align} 2\sin\theta - 1 &> 0 \\[5pt] \sin\theta &> \displaystyle\frac{1}{2} \end{align} \)

あとは\(\sin\theta\)\(\displaystyle\frac{1}{2}\)よりも大きくなる\(\theta\)の範囲を求めるだけです。 \(\sin\theta\)は単位円周上の\(y\)座標でしたから,単位円周上の\(y\)座標が\(\displaystyle\frac{1}{2}\)より大きくなる部分を考えると,下図のオレンジ部分が該当します。

これに対応する\(\theta\)の範囲は,下図の赤い角度の部分になりますね。

この\(\theta\)の範囲が不等式の解になります。 この範囲の端での\(\theta\)の値は,方程式\(\sin\theta = \displaystyle\frac{1}{2}\)を解けば分かります。 これを解くと,端の値が\(30^{\circ}, \ 150^{\circ}\)であることが分かりますから,不等式の解は\(30^{\circ} < \theta < 150^{\circ}\)です。


このように,三角比を含む不等式を解くときには,「\(\sin\theta\)\(y\)座標,\(\cos\theta\)\(x\)座標」というような認識が特に重要になってきます。 \(\sin\theta\)以外の三角比についての不等式も,確認問題で練習しておきましょう。

確認問題

次の不等式を解いてください。 ただし,\(0^{\circ} \leqq \theta \leqq 180^{\circ}\)とします。

  1. \(\cos\theta \geqq -\displaystyle\frac{1}{2}\)

  2. \(\sqrt{3}\tan\theta \geqq 1\)

  3. \(2\sin\theta - \sqrt{3} < 0\)

  4. \(\sin\theta \geqq 1\)

  5. \(\cos\theta < 1\)

  6. \(\tan\theta \leqq 1\)

答え

まずは単位円をかいて,条件を満たす\(\theta\)の範囲を図の中で考えます。 あとはその範囲の端での\(\theta\)の値を求めれば,不等式の解が分かります。

  1. \(\cos\theta\)は単位円周上の\(x\)座標ですから,それが\(-\displaystyle\frac{1}{2}\)以上になるのは,下図のオレンジの範囲です。 それに対応する\(\theta\)の範囲は,図の赤い角度の部分ですね。

    \(\cos\theta\)がちょうど\(-\displaystyle\frac{1}{2}\)になるのは,\(\theta = 120^{\circ}\)のときですから,これでこの不等式の解が\(0^{\circ} \leqq \theta \leqq 120^{\circ}\)であることが分かりました。


    一応\(\cos\theta = -\displaystyle\frac{1}{2}\)となる\(\theta\)について,求め方を復習しておきます。 \(\cos\theta\)は単位円周上の\(x\)座標であり,これが負の値であることから,\(\theta\)は第2象限に来ていることが分かります。 つまり\(\theta\)は鈍角なのですが,考えづらいので,補角の公式を使って鋭角で考えます。 \(\cos\theta = \displaystyle\frac{1}{2}\)となる\(\theta\)\(60^{\circ}\)ですね。 したがって,補角の公式より,\(\cos\theta = -\displaystyle\frac{1}{2}\)となる\(\theta\)\(180^{\circ} - 60^{\circ} = 120^{\circ}\)と求まるわけです。

  2. まず不等式を整理します。

    \( \begin{align} \sqrt{3}\tan\theta &\geqq 1 \\[5pt] \tan\theta &\geqq \displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}} \end{align} \)

    \(\tan\theta\)の定義はちょっと特殊でした。 原点と単位円周上の点を結ぶ線分を延長し,直線\(x = 1\)とぶつかる点の\(y\)座標を考えるんでしたね。 これが\(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\)より大きくなるのは,下図のオレンジの範囲です。 それに対応する\(\theta\)は,図の赤い角度の部分ですね。

    ただし,\(\tan90^{\circ}\)というものは存在しないということに注意してください。 \(\theta\)が第1象限から\(90^{\circ}\)に近づくのをイメージしてください。 近づくほど\(\tan\theta\)はどんどん大きくなりますね。 しかし,\(\theta\)\(90^{\circ}\)になると,原点と円周上の点を結ぶ直線は,直線\(x = 1\)と平行になり,両者の交点はなくなります。 したがって,\(\tan90^{\circ}\)は定義できないため,不等式の解には含められません。

    以上の点を踏まえつつ,今度はちょうど\(\tan\theta = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\)となる\(\theta\)を考えると,\(\theta = 30^{\circ}\)です。 したがって,不等式の解は\(30^{\circ} \leqq \theta < 90^{\circ}\)となります。

  3. まず不等式を整理します。

    \( \begin{align} 2\sin\theta - \sqrt{3} &< 0 \\[5pt] 2\sin\theta &< \sqrt{3} \\[5pt] \sin\theta &< \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2} \end{align} \)

    \(\sin\theta\)は単位円周上の\(y\)座標ですから,それが\(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\)未満になるのは,下図のオレンジの範囲です。 それに対応する\(\theta\)の範囲は,図の赤い角度の部分ですね。

    ちょうど\(\sin\theta = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\)となる\(\theta\)は,\(\theta = 60^{\circ}, \ 120^{\circ}\)ですね。 鋭角の方は直角三角形をかけば分かりますし,鈍角の方は補角の公式で分かりますね。 したがって,不等式の解は,\(0^{\circ} \leqq \theta < 60^{\circ}\)\(120^{\circ} < \theta \leqq 180^{\circ}\)です。

  4. \(\sin\theta\)は単位円周上の\(y\)座標ですから,\(0^{\circ} \leqq \theta \leqq 180^{\circ}\)のときは\(0 \leqq \sin\theta \leqq 1\)です。 よって,この値が\(1\)以上になるのは,\(\sin\theta = 1\)の場合しかありません。 このとき\(\theta = 90^{\circ}\)ですから,不等式の解は\(\theta = 90^{\circ}\)です。

  5. \(\cos\theta\)は単位円周上の\(x\)座標ですから,\(-1 \leqq \cos\theta \leqq 1\)です。 よって,この値が\(1\)未満になるには,\(\cos\theta = 1\)でなければOKです。 \(\cos\theta = 1\)になるのは\(\theta = 0^{\circ}\)のときですから,不等式の解は\(0^{\circ} < \theta \leqq 180^{\circ}\)です。

  6. \(\tan\theta\)は,原点と単位円周上の点を結ぶ線分を延長し,直線\(x = 1\)とぶつかる点の\(y\)座標です。 これが\(1\)以下になるのは,下図のオレンジの範囲です。 それに対応する\(\theta\)は,図の赤と緑の角度の部分ですね。

    とはいわれても・・・図が見づらいです。 順番に確認して行きましょう。


    第1象限の範囲(赤の部分)は問題ないと思います。 ちょうど\(\tan\theta = 1\)となるのは\(\theta = 45^{\circ}\)のときで,\(0^{\circ} \leqq \theta \leqq 45^{\circ}\)の範囲では\(\tan\theta \leqq 1\)が満たされます。 次に第2象限を考えると,このとき常に\(\tan \leqq 0\)であり,不等式が満たされます。 よって,\(90^{\circ} < \theta \leqq 180^{\circ}\)は不等式の解に含まれるわけです。 以上から,この不等式の解が\(0^{\circ} \leqq \theta \leqq 45^{\circ}\)\(90^{\circ} < \theta \leqq 180^{\circ}\)であることが分かりました。

次の不等式を解いてください。 ただし,(1),(2)では\(0^{\circ} \leqq \theta \leqq 180^{\circ}\)とし,(3)では\(0^{\circ} \leqq \theta < 90^{\circ}\)とします。

  1. \(\sin\theta \leqq \cos\theta\)

  2. \(4\sin^2\theta - 4\cos\theta < 5\)

  3. \(4\sin\theta - \displaystyle\frac{1}{\cos\theta} + 2\tan\theta > 2\)

答え

三角比の相互関係を使って,不等式に登場する三角比の種類を1つだけにします。 不等式なので,両辺に何かを掛けたり,両辺を何かで割るときには符号に注意してください。 負の数をかけると,不等号の向きが変わるんでしたね。

  1. 次の相互関係の式を使います。

    \( \begin{align} \tan\theta = \displaystyle\frac{\sin\theta}{\cos\theta} \end{align} \)

    不等式の両辺を\(\cos\theta\)で割れば,この相互関係の式により\(\tan\theta\)だけの不等式にできますね。 しかし\(0\)では割れないことや,負の数で割ると不等式の向きが変わることに注意が必要です。

    [1] まず\(\cos\theta = 0\)の場合を考えます。 このとき不等式の両辺を\(\cos\theta\)で割ることはできませんから,不等式が成り立つか個別に確かめる必要があります。 このとき\(\theta = 90^{\circ}\)ですから,\(\sin\theta = 1\)であり,不等式は成り立ちません。 したがって,\(\theta = 90^{\circ}\)は不等式の解に含まれません。

    [2] 次に\(\cos\theta > 0\)の場合を考えます。 このとき,\(0^{\circ} \leqq \theta < 90^{\circ}\)ですね。 不等式の両辺を\(\cos\theta\)で割ると,次のようになります。

    \( \begin{align} \sin\theta &\leqq \cos\theta \\[5pt] \displaystyle\frac{\sin\theta}{\cos\theta} &\leqq 1 \\[5pt] \tan\theta &\leqq 1 \end{align} \)

    \(0^{\circ} \leqq \theta < 90^{\circ}\)であることを考慮すると,不等式を満たすのは\(0^{\circ} \leqq \theta \leqq 45^{\circ}\)のときだけですね。

    [3] 最後に\(\cos\theta < 0\)の場合を考えます。 このとき,\(90^{\circ} < \theta \leqq 180^{\circ}\)ですね。 不等式の両辺を\(\cos\theta\)で割ると,不等号の向きが変わって次のようになります。

    \( \begin{align} \sin\theta &\leqq \cos\theta \\[5pt] \displaystyle\frac{\sin\theta}{\cos\theta} &\geqq 1 \\[5pt] \tan\theta &\geqq 1 \end{align} \)

    しかし,\(90^{\circ} < \theta \leqq 180^{\circ}\)であることを考慮すると,\(\tan\theta \leqq 0\)であるはずですから,不等式を満たす\(\theta\)は存在しません。

    以上から,この不等式の解は\(0^{\circ} \leqq \theta \leqq 45^{\circ}\)です。

  2. 次の相互関係の式を使います。

    \( \begin{align} \sin^2\theta + \cos^2\theta = 1 \end{align} \)

    これを使えば,\(\sin^2\theta\)\(\cos^2\theta\)で表し,不等式を\(\cos\theta\)で統一することができます。

    \( \begin{align} 4\sin^2\theta - 4\cos\theta &< 5 \\[5pt] 4(1 - \cos^2\theta) - 4\cos\theta &< 5 \\[5pt] 4 - 4\cos^2\theta - 4\cos\theta &< 5 \\[5pt] 4\cos^2\theta + 4\cos\theta + 1 &> 0 \\[5pt] (2\cos\theta + 1)^2 &> 0 \end{align} \)

    どんな実数でも2乗すれば\(0\)以上にはなりますから,不等式は\(2\cos\theta + 1 \neq 0\)でさえあれば成り立ちます。 \(2\cos\theta + 1 = 0\),すなわち\(\cos\theta = -\displaystyle\frac{1}{2}\)となるのは\(\theta = 120^{\circ}\)のときです。 したがって,この不等式の解は\(0^{\circ} \leqq \theta < 120^{\circ}\)\(120^{\circ} < \theta \leqq 180^{\circ}\)です。

  3. 不等式には三角比が3種類も登場しますから,まずは\(\tan\theta = \displaystyle\frac{\sin\theta}{\cos\theta}\)を使って\(\tan\theta\)を消しましょう。

    \( \begin{align} 4\sin\theta - \displaystyle\frac{1}{\cos\theta} + 2\tan\theta &> 2 \\[5pt] 4\sin\theta - \displaystyle\frac{1}{\cos\theta} + 2\displaystyle\frac{\sin\theta}{\cos\theta} &> 2 \end{align} \)

    分母に\(\cos\theta\)があるので両辺に\(\cos\theta\)を掛けます。 \(0^{\circ} \leqq \theta < 90^{\circ}\)という条件から,\(\cos\theta > 0\)ですから,不等号の向きは変わりません。

    \( \begin{align} 4\sin\theta - \displaystyle\frac{1}{\cos\theta} + 2\displaystyle\frac{\sin\theta}{\cos\theta} &> 2 \\[5pt] 4\sin\theta\cos\theta - 1 + 2\sin\theta &> 2\cos\theta \\[5pt] 4\sin\theta\cos\theta + 2\sin\theta - 2\cos\theta - 1 &> 0 \\[5pt] 2\sin\theta(2\cos\theta + 1) - (2\cos\theta + 1) &> 0 \\[5pt] (2\sin\theta - 1)(2\cos\theta + 1) &> 0 \end{align} \)

    \(\cos\theta > 0\)ですから,\(2\cos\theta + 1 > 0\)です。 したがって,この不等式が成り立つのは次の場合です。

    \( \begin{align} 2\sin\theta - 1 &> 0 \\[5pt] \sin\theta > \displaystyle\frac{1}{2} \end{align} \)

    図を見るとこの不等式は\(30^{\circ} < \theta < 150^{\circ}\)で成り立つことが分かりますが,この問題には\(0^{\circ} \leqq \theta < 90^{\circ}\)という条件があります。 したがって,この不等式の解は\(30^{\circ} < \theta < 90^{\circ}\)です。

次の不等式を解いてください。 ただし,\(0^{\circ} \leqq \theta \leqq 180^{\circ}\)とします。

\( \begin{align} (2\sin\theta - 1)(2\cos\theta + 1) > 0 \end{align} \)
答え

実は前問を解く過程で出てくる不等式なのですが,\(\theta\)の範囲を広げています。 2つの式の積が正になるのは,因数が同符号のときです。 因数が両方とも正の場合と,両方とも負の場合に分けて考えましょう。


[1] まず因数が両方とも正の場合を考えます。 次の連立不等式を解けば良いですね。

\( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 2\sin\theta - 1 > 0\\ 2\cos\theta + 1 > 0 \end{array} \right. \end{eqnarray} \)

ひとつめの不等式を整理すると\(\sin\theta > \displaystyle\frac{1}{2}\)であり,これを解くと\(30^{\circ} < \theta < 150^{\circ}\)です。

ふたつめの不等式を整理すると\(\cos\theta > -\displaystyle\frac{1}{2}\)であり,これを解くと\(0^{\circ} \leqq \theta < 120^{\circ}\)です。

\(\theta\)の共通範囲をとると,この連立不等式の解が\(30^{\circ} < \theta < 120^{\circ}\)であると分かります。


[2] 次に因数が両方とも負の場合を考えます。 次の連立不等式を解けば良いですね。

\( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 2\sin\theta - 1 < 0\\ 2\cos\theta + 1 < 0 \end{array} \right. \end{eqnarray} \)

ひとつめの不等式を整理すると\(\sin\theta < \displaystyle\frac{1}{2}\)であり,これを解くと\(0^{\circ} \leqq \theta < 30^{\circ}\)\(150^{\circ} < \theta \leqq 180^{\circ}\)です。

ふたつめの不等式を整理すると\(\cos\theta < -\displaystyle\frac{1}{2}\)であり,これを解くと\(120^{\circ} < \theta \leqq 180^{\circ}\)です。

\(\theta\)の共通範囲をとると,この連立不等式の解が\(150^{\circ} < \theta \leqq 180^{\circ}\)であると分かります。


[1], [2]より,この不等式の解は\(30^{\circ} < \theta < 120^{\circ}\)\(150^{\circ} < \theta \leqq 180^{\circ}\)です。