数学コラム第 2 回

数学学習のコツ

はじめに

数学が苦手な人は,そもそもどう勉強したら良いかも分からないかもしれません。 ここでは数学との向き合い方を「学習・確認・実践」の3段階に分けて述べておきたいと思います。

目次

「解釈」が理解のカギ

まずは「学習」の段階についてです。 数学的知識をどう自分のものにすれば良いでしょうか。

数学を勉強するときに気を付けたいのは,数式をいじるだけで満足しないことです。 意味もなく数式をいじるだけなら,数学を学んで得るものはありません。 必ずその数式の意味を考え,解釈すべきです。 そうすれば,定義や公式がどうしてそんな形になったか,それが何の役に立つのかが分かります。

では解釈とは何でしょうか? それは数式をただの数式ではなく,言葉として理解することです。 言い換えれば,数学語を日本語に,日本語を数学語に翻訳できるようにすることですね。

そういうわけで本サイトでは,なるべく日本語で数学を説明し,「読める数学」となるよう気を付けています。 数学がきちんと日本語で説明されていれば,解釈の助けになり,数学学習に役立つでしょう。

補足 解釈の例

※ 以下に解釈の例を示しますが,データの分析についてまだ学んでいない方には,前提知識がないので意味不明だと思います。 他分野とは独立した内容ですから,余裕があればこちらから学習してみてください。

次の式は相関係数\(r\)の定義ですが,意味も分からず覚えようとしてもすぐ忘れてしまうでしょう。

\( \begin{align} r = \displaystyle\frac{s_{xy}}{s_xs_y} \end{align} \)

ここでは詳しく説明しませんが(ここで説明します),これは2変量の相関関係を表す共分散を,各変量の散らばりを表す標準偏差で割り,散らばりの影響をなくしスケールを統一することで,相関関係の強さを比較可能な値にしたものです。

数式を暗記だけしようとすると,謎の記号の羅列を覚えるわけですから,負担が大きいと思います。 しかしその意味が分かれば,もはや謎の記号ではなくなります。 日本語で理解し,数学語に翻訳すれば良いだけです。

「説明」できればOK

次は「確認」の段階についてです。 勉強したことが身についたかどうか,どう確認すれば良いでしょうか。

数学に限った話ではありませんが,「分かったつもり」というのは非常に厄介です。 本当は分かっていなくても,自分では分かったつもりなので,それに気付くのが難しいからです。

ある事柄について,自分が理解できているかを確かめるには,2つの方法があります。 1つは,問題を解いてみることです。 これは最も基本的な方法で,自分の理解を確かめることができます。

しかしこの方法では,問題集に載っている問題についてしか理解を確かめられません。 全分野を網羅するために,問題集をいくつもこなすのも大変です。 そこで,普段から心掛けておきたいもう1つの方法を紹介します。


自分の理解を確認するためのもう1つの方法は,その事柄について説明してみることです。 理解が不十分だと「あれ,何でこうなるんだっけ…?」と説明に詰まります。 説明に詰まったところを学習し直せば,理解が深まっていきます。 これは非常に効果的な方法なので,普段から学習後に説明することを心掛けてみてください。

説明するといっても,説明相手はいなくてもOKです。 自分の脳内で人に説明するイメージトレーニングをしましょう。 その際,相手が細かく質問してくることを想定してください。 「何となく」を残さずに理解し尽くすためです。

確認を進めていくと,自力では解消できない疑問が出てくるかもしれません。 そんなときは,逆に詳しい人に説明してもらいましょう。 説明してもらった後は,同じことを自分が説明できるか,改めて確認が必要です。

「論理」の材料と道筋

最後に「実践」の段階についてです。 身につけた知識をどう活かせば良いでしょうか。

数学を学ぶことで得られるものは,数学的知識と論理的思考力です。 数学的知識については,前項までの「学習」・「確認」で得られますが,論理的思考力は「実践」を通じて鍛えるものです。

実践とは,数学の問題を解くことです。 問題を解くといっても,解法パターンを暗記して類似問題に適用するだけではダメです。 常に「理由⇒結果」の流れを意識する必要があります。 これが論理的思考です。

数学の問題を解く手順は次の通りです。

  1. 問題の目標を確認する
  2. 問題の条件を確認する
  3. 条件から目標への道筋をつくる

この手順は証明問題の解き方と同じです。 こちらで証明の解説をしていますから,詳しくはこちらでどうぞ。

ここで概要だけ述べておくと,数学の問題を解くとき,まず問題の条件という「材料」と最終的な「目標」を確認します。 後は材料を繋ぎ合わせて目標を達成させるだけですが,そこが難しいです。

まず目標を小目標に分解して,「何をすれば目標を達成できるか」を明らかにします。 例えば,ある数が無理数であることを証明するには,その数が「実数であること」と「有理数ではないこと」の2つを証明すれば良いです。 こうして目標を小目標に分解していけば,どうすれば最終的な目標を達成できるか明らかになります。

材料を使って小目標を達成し,小目標を統合して最終的な目標を達成するのです。 ただし材料をうまく扱うには数学的知識が必要ですし,目標の分解や小目標の統合には論理的思考が必要です。 日頃から学習・確認・実践を欠かさずにいることが大切です。