前回までで2次関数の色々な問題を解けるようになったので,今回は2次関数の知識を利用できる応用問題を考えてみましょう。
目次
試しにひとつ
応用問題とはいっても,やることは「問題の状況を数式で表す」と「数式について調べる」の2つだけです。 後者は前回までで学習しましたね。 今回は応用問題をひとつ解いてみて,前者も実践してみましょう。
次の定番問題を考えます。
【問題】長さ\(80\)[\(\mathrm{cm}\)]の針金を2つに切って,2つの正方形を作ります。 この2つの正方形の面積の和を最小にしたいとき,針金をどのように切れば良いでしょうか?
こういった文章題を考えるとき,問題の状況を数式で表すのですが,次の3つのことに注意しましょう。
- 計算が楽になるように文字を使う
- 使う文字の種類はなるべく少なくする
- 文字についての条件を見落とさない
まず何を文字でおくか考えます。 例えば切った後の針金の長さを\(x\)[\(\mathrm{cm}\)],\(y\)[\(\mathrm{cm}\)]と表すことが思いつきます。 もちろんこれで考えていくことも可能ですが,2つの改善点があります。
ひとつは,何を文字でおくかを変えることです。 今のままだと,正方形の面積は\(\displaystyle\frac{x}{4} \times \displaystyle\frac{x}{4} = \displaystyle\frac{x^2}{16}\)[\(\mathrm{cm}^{2}\)]となり,分数が出てくるのがちょっと嫌です。(気にならなければ良いですが。) 代わりに正方形の一辺の長さを\(x\)[\(\mathrm{cm}\)]とすれば,面積は\(x^2\)[\(\mathrm{cm}^{2}\)]と簡単な式になります。
もうひとつは,使う文字の数を減らすことです。 上のように,片方の正方形の一辺の長さを\(x\)[\(\mathrm{cm}\)]とすれば,その針金の長さは\(4x\)[\(\mathrm{cm}\)]です。 ということは,もう一方の針金の長さは\(80 - 4x\)[\(\mathrm{cm}\)]であり,正方形の一辺の長さは\(20 - x\)[\(\mathrm{cm}\)]になります。 \(y\)という新しい文字を使う必要はないわけです。
次に\(x\)に関する条件を考える必要があります。 例えば\(x = -1\)なんかは絶対にあり得ませんよね。 また,元の針金の長さが\(80\)[\(\mathrm{cm}\)]ですから,\(x = 100\)もあり得ません。
切った後の針金の長さは\(0\)[\(\mathrm{cm}\)]より大きく\(80\)[\(\mathrm{cm}\)]より小さい必要があるので,次の条件が必要です。
これを解くと\(0 < x < 20\)です。 これが\(x\)の定義域になります。
切った後の針金は2つあります。 もう一方の針金の長さ\(80 - 4x\)に関する条件\(0 < 80 - 4x < 80\)は必要ないのでしょうか?
\(0 < 4x < 80\)という条件さえあれば,これは特に必要ありません。 片方の針金の長さが正常なら,その針金は正常に切り取れているわけですから,残ったもう一方の針金の長さも正常なのです。
\(x\)の定義域も分かりましたから,後は2つの正方形の面積の和を\(x\)の式で表して,その最小値を求めるだけです。 2つの正方形の面積の和を\(y\)[\(\mathrm{cm}^{2}\)]とすると,\(y\)は次のように表せます。
このグラフは次のようになります。

グラフから,この関数は\(x = 10\)のとき最小値\(200\)をとることが分かります。 このとき2つの針金の長さは\(4x = 40\)[\(\mathrm{cm}\)]と\(80 - 4x = 40\)[\(\mathrm{cm}\)]です。
以上から,題意を満たすためには,2つの針金を同じ長さに切れば良いことが分かりました。
確認問題で他の問題にも挑戦してみてください。
確認問題
\(N\)さんは商品\(A\)を売っています。 現在,\(A\)の単価は\(500\)円で,ひと月に\(12000\)個売れます。 \(N\)さんはこの売上高に満足しておらず,\(A\)の単価を調整したいと考えています。 単価を上げれば需要は減少し,単価を下げれば需要は増加します。
今までの経験から,\(A\)の売れる個数は,単価を\(1\)円上げるごとに\(30\)個減少し,\(1\)円下げるごとに\(30\)個増加することがわかっています。 ひと月の売上高を最大化するには,\(A\)の単価をいくらに設定すれば良いでしょうか? 売上高は「単価\(\times\)売れた個数」で求められます。
答え
\(A\)の単価を\(x\)円とおきます。 単価ですから\(x > 0\)であり,これが\(x\)の定義域ですね。
このとき,\(A\)の値上げ額は\(x - 500\)円です。 これが負の場合は値下げですね。 このとき,\(A\)の売れる個数は\(30(x - 500)\)減少します。 これが負の場合は増加ですね。
以上から,\(A\)の単価が\(x\)円のときのひと月の売上高を\(y\)円とすると,\(y\)は次のようになります。
このグラフは\(x = 450\)を軸とする上に凸の放物線です。 定義域は\(x > 0\)で,軸が定義域に含まれていますから,グラフをかくまでもなく\(x = 450\)のとき最大値をとることが分かります。
以上から,売上高を最大化する\(A\)の単価は\(450\)円でした。 今までは単価が高すぎて買ってくれる人が少なかったんですね。
動物園のオーナーである\(Z\)さんは,園内の余っているスペースを有効活用したいです。 現在,下図のように壁に囲まれた角の部分に空きスペースがあります。 ただし,これは上空から見下ろした図であり,この角は直角です。

\(Z\)さんは,このスペースに下図のようにフェンスを設置することで,動物たちの過ごす空間を確保しようと考えました。 壁とフェンスで囲まれた空間です。 ただし,予算がないため,フェンスは長さ\(8\)[\(\mathrm{m}\)]のものひとつしか用意できませんでした。

動物たちの過ごす空間をなるべく広く確保するためには,フェンスをどのように設置すれば良いでしょうか? 壁からフェンスの一端までの距離を\(x\)[\(\mathrm{m}\)]として,この\(x\)の値をいくつにすれば良いかで答えてください。
【注1】動物たちが逃げないように,フェンスの両端は必ず壁に接するようにしてください。 フェンスを切ったり折ったりもしません。
【注2】\(a > 0, \ b > 0\)のとき,\(a \leqq b\)と\(a^2 \leqq b^2\)が同値であることを使っても良いです。
答え
壁とフェンスに囲まれた空間は,上空から見ると直角三角形になっています。 この面積を最大化すれば良いですね。
まず定義域を考えておきましょう。 \(x\)は辺の長さですから,\(x > 0\)です。 また,直角三角形は斜辺が一番長いので,\(x < 8\)です。 まとめると\(0 < x < 8\)が定義域になります。
次は直角三角形の面積を\(y\)[\(\mathrm{m}^{2}\)]とし,\(x\)で表しましょう。 底辺の長さが\(x\)なのは分かっていますから,あとは高さが分かれば面積を求められます。 三平方の定理を使うと,高さが\(\sqrt{64 - x^2}\)であることが分かりますから,\(y\)は次のように表せます。
見慣れない形の関数になりましたね。 根号が厄介なので消してしまいたいです。 そこで【注2】に注目です。 これは「正の数は2乗しても大小関係は変わらないよ」という意味です。 \(y > 0\)ですから,2乗した\(y^2\)を考えてもいつ最大値をとるかが分かるわけです。 (解答の最後で補足説明します。)
\(y^2\)は次のようになります。
よく見るとこれって2次関数に近い形になっていますね。 \(t = x^2\)とおくと,この関数は次のように変形できます。
無事2次関数になりました! でもまだ油断しないでください。 \(t\)の定義域がまだ分かっていません。 \(t = x^2\)で\(x\)の定義域が\(0 < x < 8\)ですから,\(t\)の定義域は\(0 < t < 64\)ですね。
あとはいつ最大値をとるか考えるだけです。 関数式を平方完成しましょう。
\(y^2\)のグラフは\(t = 32\)を軸とする上に凸の放物線ですね。 \(t\)の定義域は\(0 < t < 64\)で,軸が定義域に含まれていますから,グラフをかくまでもなく,この関数は\(t = 32\)のとき最大値をとります。
\(t = x^2\)でしたから,このとき\(x^2 = 32\)です。 \(x > 0\)ですから,\(x = 4\sqrt{2}\)と求められますね。
【注2】の活用について補足です。 関数\(f(x)\)が\(x = a\)で最大値をとるとは,「定義域内のすべての\(x\)について,\(f(x) \leqq f(a)\)である」ということです。 もし常に\(f(x) > 0\)であれば,【注2】を活用できて,これは「定義域内のすべての\(x\)について,\(f(x)^2 \leqq f(a)^2\)である」と同値です。
つまり,常に\(f(x) > 0\)であるとき,関数\(f(x)\)が\(x = a\)で最大値をとることと,関数\(f(x)^2\)が\(x = a\)で最大値をとることは同値なのです。
今回の問題では,常に\(y > 0\)ですから,最大値をとる\(x\)を考えるのに,代わりに\(y^2\)を使うことができたわけですね。