直角三角形や単位円を使って,三角比\(\sin\),\(\cos\),\(\tan\)を定義してきましたが,これらは無関係ではありません。 今回は三角比の相互関係を確認していきましょう。
目次
三角比の相互関係
三角比の相互関係を見ていきましょう。 三角比の間には,次の関係があります。
- \(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\)
- \(\tan\theta = \displaystyle\frac{\sin\theta}{\cos\theta}\)
- \(1 + \tan^2\theta = \displaystyle\frac{1}{\cos^2\theta}\)
\(\sin^2\theta\)というのは\((\sin\theta)^2\)のことです。 \(\cos^2\theta\),\(\tan^2\theta\)も同様です。
上の相互関係を順に確認していきます。 まず,ひとつめの式ですが,単位円の図を思い出してください。

赤線を斜辺とする直角三角形で三平方の定理を使います。 斜辺の長さは\(1\)で,他の辺の長さは\(|\sin\theta|\)と\(|\cos\theta|\)ですから,次の式になります。
これでひとつめの式が確認できました。
ふたつめの式は,前回もちらっと確認しましたが,赤線を斜辺をする直角三角形で\(\tan\theta\)の定義通りに式を立てるだけです。
最後の式は,ひとつめの式の両辺を\(\cos^2\theta\)で割れば得られます。 途中でふたつめの式も活用します。
相互関係の使い方
三角比の相互関係を使えば,例えば\(\sin\)の値から\(\cos\)の値を計算するといったことができます。 それぞれの関係式の使い道を順に見ていきましょう。
まずは次の関係式です。
この関係式を使えば,\(\sin\)から\(\cos\),\(\cos\)から\(\sin\)を計算することができます。 ただし,2乗を外す必要があるので,三角比の符号には注意が必要です。 符号は\(\theta\)がどの象限にくるかを考えれば分かります。
次の関係式を見ましょう。
この関係式を使えば,\(\sin\),\(\cos\),\(\tan\)のうち2つが分かっているとき,残りの1つを計算することができます。
最後の関係式を見ましょう。
この関係式を使えば,\(\cos\)から\(\tan\),\(\tan\)から\(\cos\)を計算することができます。 ただし,2乗を外す必要があるので,三角比の符号には注意が必要です。 符号は\(\theta\)がどの象限にくるかを考えれば分かります。
これらの関係式を活用し,三角比の計算を行えるようにしましょう。 確認問題も解いて練習してみてください。
確認問題
次の問に答えてください。 ただし,全問\(0^{\circ} \leqq \theta \leqq 180^{\circ}\)であり,特に(1)では\(\theta\)は鈍角であるとします。
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\(\sin\theta = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{5}}\)のとき,\(\cos\theta\)と\(\tan\theta\)を求めてください。
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\(\cos\theta = -\displaystyle\frac{2}{3}\)のとき,\(\sin\theta\)と\(\tan\theta\)を求めてください。
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\(\tan\theta = 5\)のとき,\(\sin\theta\)と\(\cos\theta\)を求めてください。
答え
三角比の相互関係を使います。 どの関係式がどの三角比を求めるのに役立つかは,式中にどの三角比が登場するかを見れば分かります。
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\(\sin\theta\)が分かっているので,次の関係式から\(\cos\theta\)を求められます。 \(\theta\)が鈍角であることから,\(\cos\theta < 0\)であることに注意しましょう。
\( \begin{align} \sin^2\theta + \cos^2\theta &= 1 \\[5pt] \cos^2\theta &= 1 - \sin^2\theta \\[5pt] &= 1 - \displaystyle\frac{1}{5} \\[5pt] &= \displaystyle\frac{4}{5} \\[5pt] \cos\theta &= -\displaystyle\frac{2}{\sqrt{5}} \end{align} \)2つの三角比が分かったので,残りの三角比は次の関係式で求められます。
\( \begin{align} \tan\theta &= \displaystyle\frac{\sin\theta}{\cos\theta} \\[5pt] &= -\displaystyle\frac{1}{2} \end{align} \)したがって,\(\cos\theta = -\displaystyle\frac{2}{\sqrt{5}}\),\(\tan\theta = -\displaystyle\frac{1}{2}\)です。
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\(\cos\theta\)が分かっているので,次の関係式から\(\tan\theta\)を求められます。 \(\cos\theta < 0\)であることから,\(\theta\)は鈍角であり,\(\tan\theta < 0\)であることに注意しましょう。
\( \begin{align} 1 + \tan^2\theta &= \displaystyle\frac{1}{\cos^2\theta} \\[5pt] \tan^2\theta &= \displaystyle\frac{1}{\cos^2\theta} - 1 \\[5pt] &= \displaystyle\frac{9}{4} - 1 \\[5pt] &= \displaystyle\frac{5}{4} \\[5pt] \tan\theta &= -\displaystyle\frac{\sqrt{5}}{2} \end{align} \)2つの三角比が分かったので,残りの三角比は次の関係式で求められます。
\( \begin{align} \tan\theta &= \displaystyle\frac{\sin\theta}{\cos\theta} \\[5pt] \sin\theta &= \cos\theta\tan\theta \\[5pt] &= \left(-\displaystyle\frac{2}{3}\right) \cdot \left(-\displaystyle\frac{\sqrt{5}}{2}\right) \\[5pt] &= \displaystyle\frac{\sqrt{5}}{3} \end{align} \)したがって,\(\sin\theta = \displaystyle\frac{\sqrt{5}}{3}\),\(\tan\theta = -\displaystyle\frac{\sqrt{5}}{2}\)です。
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\(\tan\theta\)が分かっているので,次の関係式から\(\cos\theta\)を求められます。 \(\tan\theta > 0\)であることから,\(\theta\)は鋭角であり,\(\cos\theta > 0\)であることに注意しましょう。
\( \begin{align} 1 + \tan^2\theta &= \displaystyle\frac{1}{\cos^2\theta} \\[5pt] \cos^2\theta &= \displaystyle\frac{1}{1 + \tan^2\theta} \\[5pt] &= \displaystyle\frac{1}{1 + 25} \\[5pt] &= \displaystyle\frac{1}{26} \\[5pt] \cos\theta &= \displaystyle\frac{1}{\sqrt{26}} \end{align} \)2つの三角比が分かったので,残りの三角比は次の関係式で求められます。
\( \begin{align} \tan\theta &= \displaystyle\frac{\sin\theta}{\cos\theta} \\[5pt] \sin\theta &= \cos\theta\tan\theta \\[5pt] &= \displaystyle\frac{1}{\sqrt{26}} \cdot 5 \\[5pt] &= \displaystyle\frac{5}{\sqrt{26}} \end{align} \)したがって,\(\sin\theta = \displaystyle\frac{5}{\sqrt{26}}\),\(\cos\theta = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{26}}\)です。
\(\sin\theta + \cos\theta = \displaystyle\frac{1}{2}\)のとき,次の値を求めてください。 ただし,\(0^{\circ} \leqq \theta \leqq 180^{\circ}\)とします。
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\(\sin\theta\cos\theta\)
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\(\sin\theta - \cos\theta\)
答え
条件の式を2乗すると\(\sin\theta\cos\theta\)が現れることに気づく必要があります。 \(a + b\)を2乗して\(ab\)をつくるという手法はよく使われます。
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\(\sin\theta + \cos\theta = \displaystyle\frac{1}{2}\)の両辺を2乗して\(\sin\theta\cos\theta\)をつくります。 \(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\)であることに注意してください。
\( \begin{align} (\sin\theta + \cos\theta)^2 &= \displaystyle\frac{1}{4} \\[5pt] \sin^2\theta + 2\sin\theta\cos\theta + \cos^2\theta &= \displaystyle\frac{1}{4} \\[5pt] 1 + 2\sin\theta\cos\theta &= \displaystyle\frac{1}{4} \\[5pt] 2\sin\theta\cos\theta &= -\displaystyle\frac{3}{4} \\[5pt] \textcolor{red}{\sin\theta\cos\theta} & \textcolor{red}{=} \textcolor{red}{-\displaystyle\frac{3}{8}} \end{align} \) -
そのままでは\(\sin\theta - \cos\theta\)を求めるのは難しそうです。 しかし,2乗を計算するのは簡単です。
\( \begin{align} &\quad (\sin\theta - \cos\theta)^2 \\[5pt] &= \sin^2\theta - 2\sin\theta\cos\theta + \cos^2\theta \\[5pt] &= 1 - 2\sin\theta\cos\theta \\[5pt] &= 1 + \displaystyle\frac{3}{4} \\[5pt] &= \displaystyle\frac{7}{4} \end{align} \)ここで,\(\sin\theta\cos\theta < 0\)であり,\(\sin\theta \geqq 0\)であることを考慮すると,\(\cos\theta < 0\)です。 したがって,\(\sin\theta - \cos\theta > 0\)ですから,題意の値は次のように決まります。
\( \begin{align} \sin\theta - \cos\theta = \displaystyle\frac{\sqrt{7}}{2} \end{align} \)
\(\sin\theta + \cos\theta = a\)のとき,次の問いに答えてください。 ただし,\(0^{\circ} < \theta < 90^{\circ}\)とします。
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\(\sin\theta\cos\theta\)を\(a\)で表してください。
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2つの実数解\(\sin\theta\),\(\cos\theta\)をもつ2次方程式をつくってください。(重解になってもOK)
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\(a\)のとりうる値の範囲を求めてください。
答え
(1)は前問と同じです。 それ以降は2次方程式と結び付けた問題です。 難しい場合はここで復習しましょう。
数学Ⅱを勉強した人は,三角関数の合成の知識を使うこともできます。
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条件式の両辺を2乗します。 \(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\)に気を付けましょう。
\( \begin{align} (\sin\theta + \cos\theta)^2 &= a^2 \\[5pt] \sin^2\theta + 2\sin\theta\cos\theta + \cos^2\theta &= a^2 \\[5pt] 1 + 2\sin\theta\cos\theta &= a^2 \\[5pt] 2\sin\theta\cos\theta &= a^2 - 1 \\[5pt] \textcolor{red}{\sin\theta\cos\theta} & \textcolor{red}{=} \textcolor{red}{\displaystyle\frac{a^2 - 1}{2}} \end{align} \) -
題意の2次方程式はいくつもありますが,最も簡単なものを考えます。 それは次の方程式ですね。
\( \begin{align} (x -\sin\theta)(x - \cos\theta) &= 0 \\[5pt] x^2 - (\sin\theta + \cos\theta)x + \sin\theta\cos\theta &= 0 \\[5pt] x^2 - ax + \displaystyle\frac{a^2 - 1}{2} &= 0\\[5pt] \textcolor{red}{2x^2 - 2ax + a^2 - 1} & \textcolor{red}{=} \textcolor{red}{0} \end{align} \) -
\(a\)のとりうる範囲というのは,見方を変えれば\(a\)の満たすべき条件のことです。 考察を進めていきましょう。
例えば,\(a = 3\)という値はあり得ません。 \(0^{\circ} < \theta < 90^{\circ}\)という条件から\(0 < \sin\theta < 1\),\(0 < \cos\theta < 1\)ですね。 だから\(a = \sin\theta + \cos\theta < 2\)であり,少なくとも\(3\)になることはあり得ないのです。
この例を見ても分かる通り,\(a\)について調べるには,\(\sin\theta\),\(\cos\theta\)が好きなように値をとれるわけではないことに注意する必要があります。 それを考えるために使えるのが(2)でつくった方程式です。 この方程式は解が\(\sin\theta\),\(\cos\theta\)になるようにつくったんでしたね。 方程式の左辺を\(f(x)\)としましょう。
\( \begin{align} f(x) = 2x^2 - 2ax + a^2 - 1 \end{align} \)この方程式の解は\(\sin\theta\),\(\cos\theta\)なのですから,その解は\(0 < x < 1\)の範囲に収まっていなくてはなりません。 そうなるための\(a\)の条件が,\(a\)が満たすべき条件ですね。
つまり,方程式\(f(x) = 0\)は実数解を持ち,その解は\(0 < x < 1\)の範囲に収まる必要があるので,満たすべき条件は次の4つです。
[1] 判別式\(\geqq 0\)
[2] \(0 < \)\(f(x)\)の軸\(< 1\)
[3] \(f(0) > 0\)
[4] \(f(1) > 0\)
[1] 判別式を\(D\)とすると,次の不等式を解けば良いです。
\( \begin{align} \displaystyle\frac{D}{4} &= a^2 - 2(a^2 - 1) \\[5pt] &= a^2 - 2a^2 + 2 \\[5pt] &= -a^2 + 2 \geqq 0 \end{align} \)これを解くと\(-\sqrt{2} \leqq a \leqq \sqrt{2}\)です。
[2] まずは軸を求めるために平方完成します。
\( \begin{align} f(x) &= 2x^2 - 2ax + a^2 - 1 \\[5pt] &= 2(x^2 - ax) + a^2 - 1 \\[5pt] &= 2\left\{\left(x - \displaystyle\frac{a}{2}\right)^2 - \displaystyle\frac{a^2}{4}\right\} + a^2 - 1 \\[5pt] &= 2\left(x - \displaystyle\frac{a}{2}\right)^2 - \displaystyle\frac{a^2}{2} + a^2 - 1 \\[5pt] &= 2\left(x - \displaystyle\frac{a}{2}\right)^2 + \displaystyle\frac{a^2}{2} - 1 \end{align} \)これで軸が\(x = \displaystyle\frac{a}{2}\)であることが分かりましたから,次の不等式を解けば良いですね。
\( \begin{align} 0 < \displaystyle\frac{a}{2} < 1 \\[5pt] 0 < a < 2 \end{align} \)[3] 次の不等式を解けば良いです。
\( \begin{align} f(0) = a^2 - 1 > 0 \\[5pt] a < -1, \ 1 < a \end{align} \)[4] 次の不等式を解けば良いです。
\( \begin{align} f(1) &= 2 - 2a + a^2 - 1 \\[5pt] &= a^2 - 2a + 1 \\[5pt] &= (a - 1)^2 > 0 \end{align} \)これは\(a \neq 1\)のとき常に満たされます。
以上4つの不等式の共通範囲をとると,\(1 < a \leqq \sqrt{2}\)です。 これが\(a\)のとりうる値の範囲です。