今回から場合の数の数え方を学びます。 場合の数について抽象的な話をしてもピンときませんから,具体例を通して学んでいきます。 確率にも繋がる内容ですから,しっかりとマスターしましょう。
目次
樹形図
場合の数を数えるとき,秩序立った数え方をする必要があります。 例えば本棚にある本を数えるとき,ランダムに目についた本から数えるより,端から順に数えた方がミスをせずに済みますね。
多くの場合の数の問題は,端から数えられるほど単純ではありません。 ですが情報をうまく整理すれば,正しく効率よく場合の数を数えられます。
代表的な情報整理方法は,ありえる場合を樹形図として図示する方法です。 例として,次の集合の部分集合で,要素が\(3\)個であるものの総数を数えます。
樹形図の考え方は,まず\(a\)で始まる集合を徹底的に考え,次に\(b\)で始まる集合を徹底的に考えるというように,"小さいもの"から順序良く全ての場合を数えるものです。 アルファベットの大小は辞書順で考えられます。
集合の要素に順序はありません。 例えば,次の2つの集合はどちらも全く同じものです。
つまり集合の要素の並べ方は全く気にしなくて良いのです。 ですが,場合の数は"順序良く"数えることが大事ですから,要素も順序良く並べて考えた方が良いです。
アルファベットを要素とする集合であれば,要素をアルファベット順に並べると良いですね。
ではまず\(a\)で始まる集合を考えてみましょう。 集合の要素をアルファベット順に並べることにすると,\(a\)の次の要素としては\(b\),\(c\)が考えられます。 これを次のように枝分かれの図にします。

集合の要素が\(3\)つ必要なので,もうひとつ枝分かれが必要です。 \(b\)の次には\(c\)と\(d\)が,\(c\)の次には\(d\)だけが考えられるので,樹形図の続きは次のようになります。

\(a\)の次の要素として\(b\),\(c\)は考えられますが,\(d\)はあり得ません。 \(d\)より大きい要素がもう無いので,その次の要素がもう考えられないからです。

このように,その先が続かない枝は書かないのですが,大きな樹形図になると,その先が続くかどうかの判断が難しいかもしれません。 そんなときは,とりあえず何でも枝分かれを書いてしまって,先が続かない枝は後で消してしまえば良いです。
これで\(a\)で始まる集合は考え尽くしました。 次は\(b\)で始まる集合を考えましょう。 といっても,\(b\)の次は\(c\),\(d\)と続くしかないですね。 というわけで,次の図が樹形図の完成形です。

樹形図を見れば,要素が\(3\)個である部分集合の個数が\(4\)であることが分かりますね。 さらに樹形図の枝分かれを左から追えば,\(4\)つの部分集合が以下のものであることも分かります。
辞書式配列
先ほどのような簡単な問題であれば,わざわざ幅をとる樹形図をかかなくても,ありえる場合を辞書順に並べるだけで済みます。
集合の要素を\(abd\)のようにアルファベット順に並べることにして,ありえる部分集合を辞書順に並べることにします。 一番初めに来るものは,左からなるべく小さいアルファベットを並べた次のものですね。
その次は,右の方から少しずつ大きいアルファベットと交換していけば,小さいものから順に考えることができます。 末尾の\(c\)をひとつ大きい\(d\)にしたものが,辞書順で次に来るものです。
次に来るものは何でしょうか? 末尾はもうより大きいものに交換できませんから,その手前の\(b\)をひとつ大きい\(c\)に交換します。 このとき末尾には\(c\)より大きいものが来ますが,それは\(d\)しかありません。
もう\(c\)も\(d\)もより大きいものに交換できません。 次は頭の\(a\)を\(b\)に交換するしかありませんが,その続きは\(cd\)と続くしかありません。
これで辞書順最大のものが出てきましたから,全部の部分集合が出尽くしたことになります。 この方法でも場合の数は\(4\)ですね。 少しずつ大きいものに取り替える方法に慣れておきましょう。
和の法則
さいころを\(2\)つ振って,出た目の合計が\(11\)以上になる場合の数はいくつでしょうか? この問題を考えるときは,合計が\(11\)になる場合と\(12\)になる場合に場合分けすると考えやすいです。
まず,出た目の合計が\(11\)になる場合を考えます。 \(2\)つのさいころの目を\((3, 4)\)のように組として表すことにすると,目の合計が\(11\)になるのは,次の\(2\)通りです。
次に出た目の合計が\(12\)になる場合を考えると,次の\(1\)通りしかありませんね。
以上のことから,出た目の合計が\(11\)以上になる場合の数は\(2 + 1 = 3\)です。 場合の数を数えるとき,考えやすいように場合分けすることは大事です。
さて,この項の題になっている和の法則ですが,実はもう使いました。 和の法則の内容は,次の通りです。
同時には起こらない\(2\)つの事柄\(A\),\(B\)の場合の数をそれぞれ\(m\),\(n\)とする。 このとき,\(A\)または\(B\)が起こる場合の数は,次の通りになる。

先ほどの場合分けはこの法則を利用しています。 出た目の合計が\(11\)になる場合と\(12\)になる場合は同時には起こりません。 だから\(11\)以上になる場合の数を数えるときは,この2つの場合の数を足せば良かったのです。
もちろん「ある数が偶数になる場合」と「ある数が\(3\)の倍数になる場合」のように同時に起こる可能性がある事柄の場合の数は,そのまま足すわけにはいきません。 足した後に同時に起こる場合の数を引く必要があります。
和の法則は当たり前の内容で,普段から意識せずに使っている法則だと思います。 例えば,分けて数えてから合計するときには,和の法則を使っています。
和の法則の内容が当たり前と思った人は,変に法則として意識しなくて良いと思います。 数学の解答にも「和の法則より…」とわざわざ書く必要はありません。 今まで通り自然に使えばOKです。 変に意識すると混乱しますしね。
積の法則
さいころを\(1\)つ振ったとき,出る目の場合の数は\(6\)です。 では,さいころを\(2\)つ振ったとき,出る目の組の場合の数はいくつでしょうか? \(2\)つのさいころをそれぞれ\(A\),\(B\)と呼ぶことにします。
まずさいころ\(A\)の目が\(1\)であった場合を考えましょう。 このとき,さいころ\(B\)の目としては\(1\)~\(6\)の\(6\)通りがあります。 さいころ\(A\)の目が\(2\)や\(3\)であった場合も,さいころ\(B\)の目の出方は\(6\)通りあります。
というわけで,さいころ\(2\)つの目の組は次の計算の通り,\(36\)通りあります。
ここでは積の法則を使っています。 次の内容です。
事柄\(A\)の場合の数が\(m\)であり,その各場合に対して事柄\(B\)の場合の数が\(n\)であるとする。 このとき,\(A\)と\(B\)がともに起こる場合の数は,次の通りになる。

これも和の法則と同じく当たり前の内容です。 \(A\)と\(B\)を組み合わせたときの場合の数というイメージです。 よく見ると積の法則は,和の法則を繰り返し使った結果ですね。 特に新しい事実でもありません。
確認問題
次の\(5\)つのアルファベットから\(3\)つを選び,\(1\)列に並べてできる\(3\)文字の文字列はいくつあるか答えてください。
答え
樹形図を使う方法,辞書順で考える方法の両方を試してみます。
[1] まずは樹形図で考えます。 各アルファベットがいくつあるかに注意すると,樹形図が次のようになることが分かります。

樹形図より,できる文字列は\(18\)個あることが分かります。
[2] 辞書順でも考えてみます。 まず辞書順で一番小さい文字列は,左からなるべく小さいアルファベットを並べた次の文字列です。
次の文字列は,末尾をひとつ大きいアルファベットに交換したものです。
次は末尾をより大きいアルファベットに変えられませんから,2文字目の\(a\)をひとつ大きい\(b\)に交換することになります。 そして,末尾のアルファベットは改めてなるべく小さいものに交換します。
この手順を繰り返していくと,次のようにできる文字列が辞書順で分かります。
したがって,できる文字列は\(18\)個あります。
\(2\)つの箱\(A\),\(B\)があります。 \(A\)には赤玉が\(3\)個,青玉が\(4\)個入っています。 また,\(B\)には赤玉が\(5\)個,青玉が\(2\)個入っています。 全ての玉には重複しないシリアルナンバーがついています。
\(A\),\(B\)から\(1\)個ずつ玉を取り出したとき,取り出した玉が赤玉\(1\)個,青玉\(1\)個の組み合わせになる場合が何通りあるか答えてください。
答え
場合の数を数えるときには,まず状況をはっきりさせることが大事です。 「取り出した玉が赤玉\(1\)個,青玉\(1\)個」という状況をよりはっきりさせると,次のいずれかの状況です。
- \(A\)から赤玉,\(B\)から青玉を取り出す場合
- \(A\)から青玉,\(B\)から赤玉を取り出す場合
この\(2\)つの場合は同時には起こりません。 それぞれの場合の数を合計すれば,「取り出した玉が赤玉\(1\)個,青玉\(1\)個」になる場合の数が分かります。
まず(1)を考えます。 箱の中に入っている玉の数を考えれば分かる通り,\(A\)から赤玉を取り出す方法は\(3\)通りです。 また\(B\)から青玉を取り出す方法は\(2\)通りです。 その組み合わせを考えれば,\(A\)から赤玉,\(B\)から青玉を取り出す場合の数は次の通りです。
次に(2)を考えます。 箱の中に入っている玉の数を考えれば分かる通り,\(A\)から青玉を取り出す方法は\(4\)通りです。 また\(B\)から赤玉を取り出す方法は\(5\)通りです。 その組み合わせを考えれば,\(A\)から青玉,\(B\)から赤玉を取り出す場合の数は次の通りです。
(1),(2)の場合の数を合わせれば,取り出した玉が赤玉\(1\)個,青玉\(1\)個になる場合の数は,次の通りになることが分かります。
というわけで,答えは\(26\)通りでした。