前回までで場合の数を学んできましたが,これで確率を学ぶ準備が整いました。 まずは確率の考え方を学び,簡単な例を見てみましょう。
目次
試行と事象
確率を考える前に,確率の定義に必要な「試行」と「事象」とは何か,確認しておきましょう。 ただ定義だけ見てもピンと来ないので,まず具体例から考えます。
さいころを振ったとき,どんな目が出るか。 くじを引いたとき,アタリが出るか。 こんなことを考えるときに確率を使いますね。 ここで「さいころを振ること」や「くじを引くこと」が試行,「\(3\)の目が出る」や「アタリが出る」が事象です。
詳しくいうと,試行とは,次の性質を持つ行為です。
- 行為の結果が偶然に決まる。
- 同じ条件で繰り返し行うことができる。
また,事象とは,試行によって起こりうる結果の集合です。 特に起こりうる結果すべてを集めた事象を全事象,\(1\)個の要素だけからなる事象を根元事象といいます。 おまけに,空集合に対応する事象を空事象といい,\(\varnothing\)で表します。
例えば,さいころを\(1\)個振って出た目を確かめる試行では,次の集合が全事象です。
また,根元事象は次の\(6\)つです。
事象の例としては,次のようなものがあります。 試行のあり得る結果を組み合わせたものですね。
事象の内容 | 事象 |
---|---|
奇数の目が出る事象 | \(\{1,\ 3,\ 5\}\) |
偶数の目が出る事象 | \(\{2,\ 4,\ 6\}\) |
素数の目が出る事象 | \(\{2,\ 3,\ 5\}\) |
確率
ある試行について,事象\(\mathrm{A}\)がどれくらい起こりそうか知りたいとき,どう考えれば良いでしょうか? 単純に考えれば,事象\(\mathrm{A}\)が全事象に占める割合を考えれば良さそうです。
例えば,さいころを\(1\)つ振って目を確認するとき,全事象を\(\mathrm{U}\),奇数が出る事象を\(\mathrm{A}\)とします。 その要素数の割合を考えれば,事象\(\mathrm{A}\)の起こりやすさは次のように計算できそうです。
実際,さいころを振ると\(2\)回に\(1\)回くらい奇数の目が出ますから,この計算で特に問題なさそうですね。 これを事象\(\mathrm{A}\)の確率といい,\(P(\mathrm{A})\)で表します。
根元事象が同様に確からしい試行について,事象\(\mathrm{A}\)の確率\(P(\mathrm{A})\)を次の値で定義する。 \(\mathrm{U}\)はこの試行の全事象である。
根元事象が同様に確からしいとは,すべての根元事象の起こりやすさが同程度だということです。 これを見落とすと確率は理解できませんから,次項で「同様に確からしい」とは何か,よく考えてみましょう。
確率には次の性質があることも押さえておきましょう。 どれも当然の内容ですね。
\(\mathrm{A}\)を,全事象を\(\mathrm{U}\)とする試行の事象とする。 その確率\(P(\mathrm{A})\)について,次が成り立つ。
- \(0 \leqq P(\mathrm{A}) \leqq 1\)
- \(P(\varnothing) = 0\)
- \(P(\mathrm{U}) = 1\)
同様に確からしい
ある宝くじを\(1\)枚買って,それが\(1\)等ならアタリ,それ以外ならハズレとする試行を考えてみましょう。 アタリが出る確率はどれくらいでしょうか?
この試行では,全事象が\(\{\)アタリ\(,\)ハズレ\(\}\)です。 アタリが出る事象は\(\{\)アタリ\(\}\)ですから,アタリが出る確率を次のように計算してみます。
果たしてこれは正しい「アタリが出る確率」でしょうか? どう考えてもおかしいですね。 これだと\(2\)回に\(1\)回くらいアタリ,つまり\(1\)等が出そうですが,そんな簡単に宝くじが当たれば苦労しません。
一体何がいけなかったかというと,アタリとハズレを同列に扱っていることです。 この確率の計算は,アタリとハズレの起こりやすさが同程度,つまり同様に確からしくなければ成り立ちません。
ちなみに本当の「アタリが出る確率」は,宝くじの種類によりますが,\(1000\)万分の\(1\)程度だったりと相当低い確率です。 「当たるか外れるかの\(2\)択だから確率は\(2\)分の\(1\)」というのは間違いです。
根元事象が同様に確からしい試行の例としては,「さいころを振って目を確認する」や「コインを投げて裏表を確認する」が挙げられます。 もちろん不正がないことが前提です。
確率の問題では,普通わざわざ不正がないことを明記しません。 根元事象が同様に確からしいかどうかは,常識的に判断しましょう。
確認問題
さいころを\(2\)個投げて,出た目の和を考えます。 この試行について,次の問いに答えてください。
-
目の和としてあり得る値を全て書き出してください。 これがこの試行の根元事象たちです。
-
(1)で求めた根元事象は同様に確からしいかどうか,理由と併せて答えてください。
-
目の和が\(10\)になる確率を求めてください。
答え
根元事象が同様に確からしいかどうか,注意しないと確率の計算を間違えます。
-
さいころ\(2\)個の目の出方を全て書きだして,それぞれの場合について目の和を求めます。
目 \(1\) \(2\) \(3\) \(4\) \(5\) \(6\) \(1\) \(2\) \(3\) \(4\) \(5\) \(6\) \(7\) \(2\) \(3\) \(4\) \(5\) \(6\) \(7\) \(8\) \(3\) \(4\) \(5\) \(6\) \(7\) \(8\) \(9\) \(4\) \(5\) \(6\) \(7\) \(8\) \(9\) \(10\) \(5\) \(6\) \(7\) \(8\) \(9\) \(10\) \(11\) \(6\) \(7\) \(8\) \(9\) \(10\) \(11\) \(12\) この表から分かる通り,目の和としてあり得る値は,次のものです。
\( \begin{align} 2,\ 3,\ 4,\ 5,\ 6,\ 7,\ 8,\ 9,\ 10,\ 11,\ 12 \end{align} \) -
根元事象が同様に確からしいかを確認するために,さいころの目の和が特定の値になる場合の数をそれぞれ求めます。
目の和 場合の数 \(2\) \(1\) \(3\) \(2\) \(4\) \(3\) \(5\) \(4\) \(6\) \(5\) \(7\) \(6\) \(8\) \(5\) \(9\) \(4\) \(10\) \(3\) \(11\) \(2\) \(12\) \(1\) 計 \(36\) このように,目の和がある値になる場合の数はそれぞれ異なるため,この試行の根元事象は同様に確からしくないです。
-
目の和は(1)で見た通り,\(11\)通りの値をとりますが,これらは同様に確からしくないので,\(\displaystyle\frac{1}{11}\)が答えにはなりません。
しかし,さいころ\(2\)個の目の組み合わせの出方は,同様に確からしいですから,そこに注目すれば確率を求められます。 (さいころ自身やさいころの投げ方に不正がないことは,暗黙に前提としています。)
さいころの目の出方が全部で\(6^2 = 36\)通りある中で,目の和が\(10\)になる場合は,(2)より\(3\)通りあるのですから,目の和が\(10\)になる確率は次の通りです。
\( \begin{align} \displaystyle\frac{3}{36} = \textcolor{red}{\displaystyle\frac{1}{12}} \end{align} \)
次の問題を見てください。
【問題】コインを\(2\)枚投げたとき,表が\(1\)枚,裏が\(1\)枚出る確率を求めてください。
この問題に対して,ある人は次の解答を書きました。 この解答は正しくないのですが,その理由と,正しい答えを求めてください。
【正しくない解答】コインを\(2\)枚投げた結果は,「表\(2\)枚」,「表\(1\)枚,裏\(1\)枚」,「裏\(2\)枚」の\(3\)通りである。 したがって,表が\(1\)枚,裏が\(1\)枚出る確率は\(\displaystyle\frac{1}{3}\)である。
答え
分かりやすいように各コインを\(\mathrm{A}\),\(\mathrm{B}\)と呼びます。 \(2\)枚のコインの裏表の組み合わせは,次の通り\(2^2 = 4\)通りあります。
\(\mathrm{A}\) | \(\mathrm{B}\) |
---|---|
表 | 表 |
表 | 裏 |
裏 | 表 |
裏 | 裏 |
この通り,コインを投げた結果が「表\(2\)枚」になる場合は\(1\)通り,「表\(1\)枚,裏\(1\)枚」になる場合は\(2\)通り,「裏\(2\)枚」になる場合は\(1\)通りあります。 これらは同様に確からしくないのですから,表が\(1\)枚,裏が\(1\)枚出る確率は\(\displaystyle\frac{1}{3}\)ではありません。
コインの裏表の出方\(4\)通りは同様に確からしいですから,正しい確率は次の通りです。