確率第 3 回

排反

はじめに

確率を理解する上で曖昧になりがちであり,理解が曖昧だと致命的な「排反」の概念について学びます。 ここを押さえてから次に進みましょう。

目次

排反と加法定理

確率の計算は,結局のところ場合の数の計算でした。 次の問題を解いてみましょう。

\(2\)つのさいころを投げたとき,その目の和が\(11\)以上になる確率を求めてください。

さいころの目の出方は全部で\(6^2 = 36\)通りです。 目の和が\(11\)以上になるのは,目の和が\(11\)または\(12\)になる場合です。

目の和が\(11\)になる場合は次の\(2\)通りあります。 \(2\)つのさいころの目を組にして表しています。

\( \begin{align} (5, 6),\ (6, 5) \end{align} \)

目の和が\(12\)になる場合は次の\(1\)通りあります。

\( \begin{align} (6, 6) \end{align} \)

目の和が\(11\)になる場合,\(12\)になる場合は,当然重複しませんから,この確率は次のように求められますね。

\( \begin{align} \displaystyle\frac{2 + 1}{36} = \displaystyle\frac{1}{12} \end{align} \)

さて,この確率の計算の左辺ですが,次のように分解できますね。

\( \begin{align} \displaystyle\frac{2}{36} + \displaystyle\frac{1}{36} \end{align} \)

これは,「目の和が\(11\)になる確率」と「目の和が\(12\)になる確率」の和になっていますね。 それぞれの確率を足すことで,それらの事象のいずれかが起こる確率になってしまいました。

これはいつでも成り立つわけではありません。 目の和が\(11\)になる場合,\(12\)になる場合は同時には起こりませんから,そのいずれかが起こる場合の数は,単純にそれぞれの場合の数を足せば求められます。 確率は場合の数から計算しているので,同様のことが成り立ったわけです。

このように,ある試行の\(2\)つの事象\(\mathrm{A}\)\(\mathrm{B}\)が同時には起こらないとき,\(\mathrm{A}\)\(\mathrm{B}\)は互いに排反であるとか,互いに排反事象であるとかいいます。 そして互いに排反である事象\(\mathrm{A}\)\(\mathrm{B}\)に対して次が成り立ちます。

確率の加法定理

互いに排反である事象\(\mathrm{A}\)\(\mathrm{B}\)に対して,次が成り立つ。 ただし,「\(\mathrm{A}\)または\(\mathrm{B}\)が起こる」という事象を\(\mathrm{A} \cup \mathrm{B}\)と表す。

\( \begin{align} P(\mathrm{A} \cup \mathrm{B}) = P(\mathrm{A}) + P(\mathrm{B}) \end{align} \)

確率が場合の数から計算されることを思い出せば,これは当然の内容です。 事象が互いに排反であれば,重複する場合がないから,そのまま確率を足せるわけですね。

排反でない事象の確率をそのまま足してしまうミスをときどき見かけます。 この加法定理が成り立つのは,事象が互いに排反である場合だけです。 十分に気を付けましょう。

また,理屈が分かれば,\(3\)つ以上の互いに排反である事象についても同様のことが成り立つことが理解できます。 \(3\)つの事象\(\mathrm{A}\)\(\mathrm{B}\)\(\mathrm{C}\)が互いに排反であれば,次が成り立ちます。

\( \begin{align} P(\mathrm{A} \cup \mathrm{B} \cup \mathrm{C}) = P(\mathrm{A}) + P(\mathrm{B}) + P(\mathrm{C}) \end{align} \)

もちろん\(\mathrm{A} \cup \mathrm{B} \cup \mathrm{C}\)は「\(\mathrm{A}\)または\(\mathrm{B}\)または\(\mathrm{C}\)が起こる」という事象です。

事象が互いに排反でない場合については,このような公式は成り立ちません。 この場合どうなるかは,また次回考えることにします。

確認問題

\(2\)つのさいころを投げる試行について,次の事象を考えます。

\(\mathrm{A}: \) 目の和が\(11\)以上

\(\mathrm{B}: \) 目の積が\(4\)の倍数

\(\mathrm{C}: \) 目が両方とも素数

これらの事象について,次の問いに答えてください。

  1. \(P(\mathrm{A})\)\(P(\mathrm{B})\)\(P(\mathrm{C})\)を求めてください。

  2. \(\mathrm{A}\)\(\mathrm{B}\)が互いに排反であるかどうか,答えてください。 互いに排反であれば,\(\mathrm{A}\)または\(\mathrm{B}\)が起こる確率を求めてください。

  3. \(\mathrm{B}\)\(\mathrm{C}\)が互いに排反であるかどうか,答えてください。 互いに排反であれば,\(\mathrm{B}\)または\(\mathrm{C}\)が起こる確率を求めてください。

  4. \(\mathrm{C}\)\(\mathrm{A}\)が互いに排反であるかどうか,答えてください。 互いに排反であれば,\(\mathrm{C}\)または\(\mathrm{A}\)が起こる確率を求めてください。

答え

同時に起こりうるかどうかを考えます。 さいころ\(2\)個の目を\((3, 5)\)のように,組にして表すことにします。

さいころの目の出方は全部で\(36\)通りあります。

  1. まず\(P(\mathrm{A})\)を求めます。 \(\mathrm{A}\)が起こる場合が何通りあるか考えると,本文でも見た通りですが,次の\(3\)通りです。

    \( \begin{align} (5, 6),\ (6, 5),\ (6, 6) \end{align} \)

    したがって,\(P(\mathrm{A})\)は次の通りです。

    \( \begin{align} P(\mathrm{A}) = \displaystyle\frac{3}{36} = \textcolor{red}{\displaystyle\frac{1}{12}} \end{align} \)

    次に\(P(\mathrm{B})\)を求めます。 \(\mathrm{B}\)が起こる場合が何通りあるか考えます。 目の積が\(4\)の倍数になるのは,少なくとも一方の目が\(4\)である場合か,両方の目が\(4\)以外の偶数である場合に分けられます。

    まず少なくとも一方の目が\(4\)である場合を考えます。 「少なくとも」は考えづらいので,その否定の「\(4\)が出ない」場合を数えると,これは両方の目が\(4\)以外の目から選ばれるので,\(5^2 = 25\)通りです。 したがって,少なくとも一方の目が\(4\)である場合は\(36 -25 = 11\)通りです。

    また,\(4\)なしで目の積が\(4\)の倍数になるのは,両方の目が\(4\)以外の偶数である場合です。 そのような目の出方は,\((2, 2)\)\((2, 6)\)\((6, 2)\)\((6, 6)\)\(4\)通りです。

    したがって,\(P(\mathrm{B})\)は次の通りです。

    \( \begin{align} P(\mathrm{B}) = \displaystyle\frac{11 + 4}{36} = \textcolor{red}{\displaystyle\frac{5}{12}} \end{align} \)

    最後に\(P(\mathrm{C})\)を求めます。 \(\mathrm{C}\)が起こる場合が何通りあるか考えます。 素数の目は\(2\)\(3\)\(5\)しかありませんから,目が両方とも素数になる場合は\(3^2 = 9\)通りですね。

    したがって,\(P(\mathrm{C})\)は次の通りです。

    \( \begin{align} P(\mathrm{C}) = \displaystyle\frac{9}{36} = \textcolor{red}{\displaystyle\frac{1}{4}} \end{align} \)
  2. 事象\(\mathrm{A}\)が起こるのは,さいころの目の出方が次のいずれかの場合だけです。

    \( \begin{align} (5, 6),\ (6, 5),\ (6, 6) \end{align} \)

    このうち,\((6, 6)\)の目の積は\(4\)の倍数ですから,\(\mathrm{B}\)も同時に起こります。 したがって,\(\mathrm{A}\)\(\mathrm{B}\)は同時に起こりうるので,互いに排反ではありません

  3. さいころの目のうち,素数は\(2\)\(3\)\(5\)です。 したがって,\(\mathrm{C}\)が起こる目の出方として,\((2, 2)\)があります。 この積は\(4\)の倍数であり,このとき\(\mathrm{B}\)も起こります。

    したがって,\(\mathrm{B}\)\(\mathrm{C}\)は同時に起こりうるので,互いに排反ではありません

  4. さいころの目のうち,素数は\(2\)\(3\)\(5\)です。 したがって,\(\mathrm{C}\)が起こるさいころの目の出方のうち,目の和が最も大きくなるのは\((5, 5)\)ですが,この和は\(11\)未満です。

    したがって,\(\mathrm{C}\)\(\mathrm{A}\)が同時に起こることはなく,互いに排反です

    \(\mathrm{C}\)または\(\mathrm{A}\)が起こる事象を\(\mathrm{C} \cup \mathrm{A}\)と表し,その確率を求めます。 \(\mathrm{C}\)\(\mathrm{A}\)は互いに排反なので,どちらかの事象が起こる確率は,それぞれの事象が起こる確率の和として求められます。

    \( \begin{align} P(\mathrm{C} \cup \mathrm{A}) &= P(\mathrm{C}) + P(\mathrm{A}) \\[5pt] &= \displaystyle\frac{1}{4} + \displaystyle\frac{1}{12} \\[5pt] &= \textcolor{red}{\displaystyle\frac{1}{3}} \end{align} \)