確率第 4 回

和事象・積事象・余事象

排反

はじめに

複数の事象を組み合わせた事象などを考えるのが今回のテーマです。 今後試行を繰り返すなどして,複数の事象を扱うことが増えてきますから,今回の内容をしっかり押さえておきましょう。

目次

積事象

ある試行の\(2\)つの事象\(\mathrm{A}\)\(\mathrm{B}\)を考えます。 これに対して,「\(\mathrm{A}\)\(\mathrm{B}\)も起こる事象」を\(\mathrm{A}\)\(\mathrm{B}\)積事象といい,\(\mathrm{A} \cap \mathrm{B}\)と表します。

例えばさいころを振る試行で,奇数の目がでる事象を\(\mathrm{A}\),素数の目が出る事象を\(\mathrm{B}\)とすると,\(\mathrm{A}\)\(\mathrm{B}\)\(\mathrm{A} \cap \mathrm{B}\)は次の集合になります。

\( \begin{align} \mathrm{A} &= \{1,\ 3,\ 5\} \\[5pt] \mathrm{B} &= \{2,\ 3,\ 5\} \\[5pt] \mathrm{A} \cap \mathrm{B} &= \{3,\ 5\} \end{align} \)

次項で学ぶ公式を利用すれば,積事象の確率を元の事象の確率から求められます。 しかし,積事象の確率は,上のように積事象が具体的にどんな事象になるかを考えて求めるのが基本です。

和事象

引き続きある試行の\(2\)つの事象\(\mathrm{A}\)\(\mathrm{B}\)を考えます。 これに対して,「\(\mathrm{A}\)または\(\mathrm{B}\)が起こる事象」を\(\mathrm{A}\)\(\mathrm{B}\)和事象といい,\(\mathrm{A} \cup \mathrm{B}\)と表します。 前回,確率の加法定理の説明でもちらっと出てきましたね。

例えばさいころを振る試行で,奇数の目がでる事象を\(\mathrm{A}\),素数の目が出る事象を\(\mathrm{B}\)とすると,\(\mathrm{A}\)\(\mathrm{B}\)\(\mathrm{A} \cup \mathrm{B}\)は次の集合になります。

\( \begin{align} \mathrm{A} &= \{1,\ 3,\ 5\} \\[5pt] \mathrm{B} &= \{2,\ 3,\ 5\} \\[5pt] \mathrm{A} \cup \mathrm{B} &= \{1,\ 2,\ 3,\ 5\} \end{align} \)

さて,和事象の確率はどうやって求められるでしょうか? 確率が元は場合の数から求められることを思い出しましょう。

集合の要素の数について,次の公式がありましたね。 「ざっくり数えてから調整する」方式です。

\( \begin{align} n(\mathrm{X} \cup \mathrm{Y}) = n(\mathrm{X}) + n(\mathrm{Y}) - n(\mathrm{X} \cap \mathrm{Y}) \end{align} \)

場合の数についても同じことが言えます。 場合を要素とする集合を考えれば,上の公式が当てはまるわけです。 したがって,和集合の確率についても,次の公式が成り立つことが分かります。

和事象の確率

事象\(\mathrm{A}\)\(\mathrm{B}\)の和事象の確率について,次が成り立つ。

\( \begin{align} P(\mathrm{A} \cup \mathrm{B}) = P(\mathrm{A}) + P(\mathrm{B}) - P(\mathrm{A} \cap \mathrm{B}) \end{align} \)

特に\(\mathrm{A}\)\(\mathrm{B}\)が互いに排反である場合には,両者は同時に起こらないので\(\mathrm{A} \cap \mathrm{B} = \varnothing\)であり,この公式は確率の加法定理になります。

\( \begin{align} P(\mathrm{A} \cup \mathrm{B}) = P(\mathrm{A}) + P(\mathrm{B}) \end{align} \)

ただし事象が互いに排反ではない場合は,和事象の公式の方を使わなければなりません。 十分に気を付けましょう。

余事象

ある試行のある事象\(\mathrm{A}\)を考えます。 これに対して,「\(\mathrm{A}\)が起こらない事象」を\(\mathrm{A}\)余事象といい,\(\overline{\mathrm{A}}\)で表します。

例えばさいころを振る試行で,奇数の目が出る事象を\(\mathrm{A}\)とすると,\(\mathrm{A}\)\(\overline{\mathrm{A}}\)は次の集合になります。

\( \begin{align} \mathrm{A} &= \{1,\ 3,\ 5\} \\[5pt] \overline{\mathrm{A}} &= \{2,\ 4,\ 6\} \end{align} \)

さて,この例を見れば(むしろ見なくても)分かる通り,試行の全事象を\(\mathrm{U}\)とすると,次が成り立ちます。

\( \begin{align} \mathrm{A} \cup \overline{\mathrm{A}} = \mathrm{U} \end{align} \)

\(\mathrm{A}\)\(\overline{\mathrm{A}}\)は当然同時には起こらないので,互いに排反です。 したがって,確率の加法定理を適用すると,次が成り立つことが分かります。

\( \begin{align} P(\mathrm{A} \cup \overline{\mathrm{A}}) &= P(\mathrm{U}) \\[5pt] P(\mathrm{A}) + P(\overline{\mathrm{A}}) &= 1 \end{align} \)

この式から,余事象の確率の求め方が分かりますね。

余事象の確率

事象\(\mathrm{A}\)の余事象の確率について,次が成り立つ。

\( \begin{align} P(\overline{\mathrm{A}}) = 1 - P(\mathrm{A}) \end{align} \)

集合の要素数や場合の数を考えるときと同じ考え方で,「少なくとも」や「ひとつも~ない」などは余事象を考えることで簡単になります。

確認問題

\(1\)\(13\)の番号が書かれたカードが\(1\)枚ずつ,合計\(13\)枚あります。 このカードを使い,次の試行を考えます。

【試行】カードを無作為に\(1\)枚取り出し,さいころを\(1\)個振る。 カードの番号とさいころの目の積を計算し,これをスコアとする。

この試行について,次の問いに答えてください。

  1. スコアが\(5\)の倍数になる確率を求めてください。

  2. スコアが\(50\)以上になる確率を求めてください。

  3. スコアが\(5\)の倍数または\(50\)以上になる確率を求めてください。

  4. スコアが\(5\)の倍数にも\(50\)以上にもならない確率を求めてください。

答え

場合の数を求め,確率を計算するのが基本ですが,和事象の確率の計算であれば,元の事象と積事象の確率を基に計算できます。

カードの取り出し方とさいころの目の出方の組み合わせは,次の数だけあります。

\( \begin{align} 13 \times 6 = 78 \end{align} \)
  1. さいころで\(5\)の目が出たときは,カードの番号が何であっても,スコアは\(5\)の倍数になります。 さいころが他の目のときは,カードが\(5\)の倍数,つまり\(5\)\(10\)でなければ,スコアが\(5\)の倍数になりません。

    したがって,スコアが\(5\)の倍数になる確率は,次の通りになります。

    \( \begin{align} \displaystyle\frac{13 + 2 \times 5}{78} = \textcolor{red}{\displaystyle\frac{23}{78}} \end{align} \)
  2. さいころの目ごとに考えると整理しやすいです。 さいころの目が\(3\)以下のときは,スコアは最大でも\(39\)なので,\(50\)に届きません。

    さいころの目が\(4\)のときは,カードの番号が\(13\)のときだけスコアが\(50\)以上になります。 さいころの目が\(5\)のときは,カードの番号が\(10\)以上の時,さいころの目が\(6\)のときは,カードの番号が\(9\)以上の時,スコアが\(50\)以上になります。

    したがって,スコアが\(50\)以上になる確率は,次の通りになります。

    \( \begin{align} \displaystyle\frac{1 + 4 + 5}{78} &= \displaystyle\frac{10}{78} \\[5pt] &= \textcolor{red}{\displaystyle\frac{5}{39}} \end{align} \)
  3. この事象は,(1)の事象と(2)の事象の和集合です。 それぞれの事象の確率は分かっていますから,あとはこれらの積事象の確率を求めれば,和集合の確率の公式が使えます。

    その積事象の確率とは,「スコアが\(50\)以上の\(5\)の倍数になる確率」です。 (2)より\(50\)以上のスコアは\(10\)個しかありませんから,具体的に書き出してしまいましょう。 次の\(1\)\(3\)行目は,それぞれさいころの目が\(4\)\(6\)の場合で\(50\)以上のスコアを順に書き出しています。

    \( \begin{align} &52 \\[5pt] &50,\ 55,\ 60,\ 65 \\[5pt] &54,\ 60,\ 66,\ 72,\ 78 \end{align} \)

    このうち,\(5\)の倍数にもなっているスコアは,\(5\)個だけです。 したがって,この積事象の確率は,次の通りです。

    \( \begin{align} \displaystyle\frac{5}{78} \end{align} \)

    この確率と(1),(2)の確率を使えば,題意の確率を次の通りに求められます。

    \( \begin{align} &\quad \displaystyle\frac{23}{78} + \displaystyle\frac{5}{39} - \displaystyle\frac{5}{78} \\[5pt] &= \displaystyle\frac{23 + 10 - 5}{78} \\[5pt] &= \displaystyle\frac{28}{78} \\[5pt] &= \textcolor{red}{\displaystyle\frac{14}{39}} \end{align} \)
  4. この事象は,(3)の事象の余事象ですから,(3)の結果を利用してすぐに確率を求めることができます。

    \( \begin{align} 1 - \displaystyle\frac{14}{39} = \textcolor{red}{\displaystyle\frac{25}{39}} \end{align} \)